「食」とはかくも深き探求を要するジャンルです。
美食家であったブリア=サヴァランの最も引用されている言葉で “You are what you eat.” というものがあります。これは「食べているものでその人の人となりがわかる」という意味なのですが、今回読んだ本「食べる私」。食べることは生きることであり、食は自由であること。その上で自分にとっての食はどうなのか、改めて考えさせられる本でした。
あの人は、普段何を食べてるんだろう…とても関心があります。食べものについて語れば、人間の核心が見えてくることもあります。何を食べるか、誰とどう食べてきたか、何を食べないか、食べてこなかったか。普段、ご来店くださってるお客様の投稿をみて、この食材も好きなのかもと献立に思考をめぐらせたりします。
職業柄、様々な食に興味があるので、基本的な意識としては常に新たなお店を探求しています。特に料理人としては、その時代のトレンドが気になるので、話題になっている人気のお店に勉強のために行きたいと思い、様々な飲食店に行くのですが、食によって腹を満たすことにその目的がある訳ではなく、腹を満たすというよりはむしろ、知的好奇心を満たすというか、心を満たすことが真の目的で行ったりもします。(結局、行くところはかなり固定されていますが)
僕達の仕事は、ご来店くださる不特定多数の方々をお客様としてお迎えし、料理をふるまっておもてなしする事です。
長く続けることによってファンになってくださり、何度も足を運んでくれていわゆる常連様になっていただける方もいらっしゃいますが、その多くは一度きりなんて場合もあったりするわけです。
新規開拓はそのお店に何度か行ってみて、やっぱり自分には合わないかも…となることもあります。
しかし、選ばれる立場になった場合逆の事もありえます。
和食の美味しいお店を探していて、姿を選んでいただいた時、いつも行く行きつけのお店の予約が取れなかったからとウチを選んでくださった時など、「やっぱり、いつも行く店のほうがよかったね〜」なんて言われないように、常にベストの料理を出せるように、喜んでいただけるように、手を抜かず気を抜かずいつも真摯な気持ちで努めていかなければいけないなと改めて思いました。
料理が美味しいからお店が上手くいくとは限らなくて、美味しくなくても満席になってる店もあります。
満席になっているから儲かってるわけでもなくて、そもそもの仕組みが間違っていたら忙しく働いても利益が出ません。
そして、料理や味の感想として、「美味い」や「不味い」という表現を、つい使いがちですが、しかし、本当は「合う」「合わない」という表現のほうが正しいのかもしれません。